2011年04月15日

油井先生より医療支援活動報告

整形外科医の油井直子です。
遅くなりましたが4/8〜/10までの活動内容についてご報告します。

メンバー、移動経路に関しては安藤さんの報告をご参照ください。

出発に先立ち自分たちで準備したものは、ガソリン40L、水16Lタンク分と2Lペットボトルで約8本分、自炊用の食料とテント泊用の道具一式。また今回は整形外科的対応を想定していたので、外用湿布薬を(試供品も含め同僚や関係者からの援助により)小さい段ボール2箱分ほど持参しました。

1、整形外科的に対応した内容:
4/9(土)小滝地区、長観寺、大指林業センターでの診察 計9名。それ以外に依頼のあった自宅への往診3件(64歳―脊髄小脳変性症、93歳―眠剤内服後の意識低下、97歳―腰椎圧迫骨折と悪性黒色腫)。
4/10(日) 相川、はまぎく避難所での診察計11名。往診なし。

2日間通した症状の内訳は、腰痛7件、膝関節痛6件、肩こり4件、左足関節痛1件、左肘拘縮1件で、持病である慢性疾患の悪化と震災のがれき撤去や炊き出しなどによる労作性の肩こりを認めました。
疾患としては、変形性脊椎症、腰椎圧迫骨折、腰筋筋膜症、変形性膝関節症、頚椎症、骨粗鬆症、肩関節周囲炎、左肘部管症候群の術後などで、 薬の内容が明確で、避難所のストックから手に入る場合は追加でお出ししましたが、ほとんどの方は外用湿布剤で対応が可能でした。しかし、それすら手に入らない際の対処として、小西先生(PT)にお手伝いいただき膝痛の方へは大腿四頭筋訓練を指導しました。が、実際に継続してやってもらえるかは分かりません。
また、腰痛用のコルセットも持っていた方に聞くと流されてしまってどこ行ったかわかんね、状態で出来る事は限られてました。

2、直接の対応/処置は以下の2件。
 一件は、3/14雪道で足を強く捻ってずっと痛みを我慢していた59歳女性。炊き出しや避難所の作業に追われ検査どころではなかったようで、既に受傷後4週近く経過。診察上、左腓骨遠位部・脛骨内果骨折が疑われたため、疼痛予防の最低限のテーピング固定を小西先生(PT)にやっていただき、大変感謝されました。(テーピングはご本人が持っていたものを使用し、最小限の範囲で指導。)
4/14にようやくかかりつけ整形外科へ行くというので、こちらからは骨折の可能性を説明し、きちんと調べてもらうよう依頼しました。
もう一件は、脊髄小脳変性症で往診した64歳女性。震災後、デイケア施設でのリハビリが完全にストップしたため困っているという事情でした。幸い四肢の拘縮はひどく有りませんでしたが、このまま車いすに座った状態が続くと明らかに体は固くなるため、ご家族に負担のかからない範囲でのリハビリ指導を一緒に施行しています。メインは小さな子供を持つ娘さんに頼るしか方法はありませんでした。
 
この家と同様、地域の福祉を利用しながらどうにか機能が維持されている高齢者や肢体不自由疾患をもつ人々にとって、今回の震災は極めて厳しい仕打ちとしか言えないです。
整形外科的対応を総じると、慢性疾患への対応が一番多かったと言えます。湿布一枚でも大変喜ばれたので、持参して直接渡してあげたり張ってあげたりした事は、大変意味があったかもしれません。

3、救急搬送の関与
安藤さんが既に説明されている、往診で訪問した93歳の男性。もともと慢性呼吸器疾患で片肺しか機能していない高齢の方であるが、自分で起きて歩く事は出来ていたそうです。
4/6の夜、不穏のため家族が睡眠を服用させてから、ずっと寝続けていてなかなか覚醒しないため大丈夫でしょうか?との依頼でありました。一週間前には脱水に対して齋藤先生が点滴をしてくれていた人で、状態としては要注意人物であったそうです。斎藤先生にも再度ご判断頂いたうえ、全身状態は以前に比べても明らかに悪化してたため、息子さんの車を利用して石巻日赤の救急へ搬送する事になりました。藤木看護師と石巻専修大学の山内先生に同行してもらってます。救急外来でもサチュレーションは拾えず、静脈採血困難。動脈採血へ。検査上、貧血(Hb=5.0台)と輸血の必要性があるため
緊急入院となりました。貧血の原因が消化管出血であるか否かの判断は日赤のドクターに任せるしかありません。夜間9時過ぎに尋ねた時の経過では、room airで 血ガスPco2 =48、Po2=66、のところ酸素吸入でようやくPo2=100、血圧160/100にまで回復。結局のところ、脱水、低栄養、貧血、低酸素、の所に眠剤が効いて、肺炎も併発という経過でありました。いつもは息子さんやお孫さんが自宅で面倒見てくれており、入院後は市内に妹家族がいるので来てもらえます、と一安心してました。

今回、往診に出向かなかったら齋藤先生に相談する事もなかった訳で、となると全く医療関与がないまま、このおじいさんに関しては家族がおろおろするばかりであったでしょう。今思うとぞっとします。そうでなくても月曜日には既に現地入りしていた愛媛の医療チームが担当する事になっていたそうですが、一日でも早めに対応でできたことは不幸中の幸いでした。

4、移動手段について
今回は二度目の参加となる三浦Dの安藤さんが全行程いてくれたので、道に迷う事もなく、比較的スムーズに現地へ入る事ができました。道路事情も不安定、通行止めもあり、慣れない土地でいざ動こうと思っても土地勘がないと相当ムリであります。よって、今後現地へ入る方はルートやその土地の事情ををある程度分かっている人と一緒に行く事を勧めたいです。また、帰路に着こうと高速をめざしても三陸道はかなり帰省渋滞が発生してました。下道でのショーットカットが必要です。東京都内から出発して、休憩3回入れて約6時間はかかりました。

5、医療支援の参加形態について
今回のような日本登山医学会のボランテイア支援は、自己完結の出来る医療集団として大変意味のあるものと感じていますし、自分もそう有ろうと準備して参加してきました。幸い現地を目の当たりにした活動ができて、今でもいろいろ考えさせられてます。そういった経緯のなか、徐々に医療ニーズが変化していると肌で感じましたし、現地で活動する他県医療チームとのダブりも明らかになっていたので、すでに継続性の困難な個人的な支援は、かえって現場の迷惑になるので、避けた方がいいように思いました。きっと時期的にみて、広く浅くの医療を継続してやれる体制がいいのかもしれません。

今後の支援体制の解決策としてですが、各地の医師会や各大学レベル、各民間病院レベルでも継続的なチーム派遣を行なっているはずです。まずはその存在を確認した上で、現地へ行きたい、あるいは行ける先生方はチームに組み込んでもらい、医師としての保障や後方バックアップの十分な状態で被災地支援を行なって行く体制の方が動きやすいのではないかと思います。山岳医としての立場も意味ありますが、それ以前に我々は医師なので、きっと助けを必要とされていますし、絶対どこでも不足しているはずです。

現実的な話、私が今回個人のボランテイアとして参加するにあたり、所属大学に正直に申告してから出かけようとしましたが、最後の最後になって大学から「先生の気持ちは十分理解するけど、個人活動中に何か起こっても大学は一切関与しませんよ!」としっかり釘を刺されて出陣しました。ただ、これはうちの大学でもチーム派遣体制が存在していたからこその話で、行くならチームで参加して下さいと言う理由があったからです。今後長期戦の医療支援が必要となるからこそ、特に勤務医の立場で被災地へ行かれる先生に対して以上の点、私からアドバイスいたします。(それでも、頼まれたら黙って出かけてしまうかもしれませんが・・・。)

6、個人的な感想として
内科系の先生がいてくれると、本当に助かります!。高血圧、糖尿病、高脂血症、胃潰瘍、不整脈、・・・・避難所はほとんどが高齢の方々なので薬の調整など、本当に大変でした。大勢いてくれても不足は無いように思いました。今回も斎藤先生や西岡先生がいなかったら、整形外科の私など全く太刀打ちできなかったと思います。参考までにですが、現地へ出向く先生方は「今日の治療薬」最新版を持参下さい。新薬からゾロ品まで、いろんな薬が普及してます。なじみのない薬は全く分かりませんので、あると大変助かります。また、薬をなくして何を飲んでいたか全く分からない人が多いのですが、薬の実写写真があると「青のシートで白い薬を飲んでました!」といった感じに、視覚的に見えれば、内服薬が即座に判明するといった利点があります。手間がかかるかもしれませんが、話を聞くより早いかもしれません。

スポーツ医学的なリハビリも想定しまして、同行の小西先生と一緒に体操指導などできるといいな・・・と思ってましたが、「さあ皆さん、一緒に体操しましょう!」なんて、言える雰囲気ではありませんでした。避難所も明るく、落ち着き、毛布や物資も行き渡り、週二回の入浴も可能、老人達は数名こたつに入っておしゃべりしている、確かになごやかムードではありましたが何するでもなく、定期的に配られる食事の時間を話しをしながら流れるままに費やしている、そう見えました。いきなりの訪問者にいろいろ言われたくないでしょう。お互いの信頼関係ができて、中にいる人たちからの要求が出て来てはじめてリハビリ的な体操が出来るのかもしれません。

以上、長い文面となり申し分けありません。 
短期間の派遣でありましたがご報告申し上げます。   油井直子
posted by 日本登山医学会ブログ at 16:22| Comment(0) | 会員情報
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