2011年04月05日

澤谷先生の被災地医療支援報告

<東北関東大震災における医療活動についての報告>

1. スケジュール
3月24日(木)日本登山医学会本隊で午後東京発→SAで他隊と合流し夜気仙沼着
3月25日(金)AM8:00気仙沼の医療支援拠点(気仙沼市民健康管理センター)にてミーティングに参加。その後石巻、南三陸の孤立集落(石巻市北上町十三浜、小指漁港周辺など)を回り、物資(アレルギー児用ミルク、おむつ、医療用手袋その他)を届けるとともに巡回診療。
 同日夜より本隊と分かれ、気仙沼へ。
3月26日(土)AM8:00気仙沼の医療支援拠点にてミーティングに参加。日本医科大学の救命救急チームとペアを組み、定点での診療活動、および巡回診療に参加。
3月27日(日)AM8:00気仙沼の医療支援拠点にてミーティングに参加。日本医科大学の救命救急チームとペアを組み、定点での診療活動、および巡回診療に参加。夕のミーティングに参加した後19:30頃より現地発、帰途に。
3月28日(月)未明、都内着。帰宅。

2. 活動内容
・日本登山医学会での巡回診療:十三浜の避難所において、パニック障害、身体表現性障害と思われる不定愁訴の60代女性を診察しました。精神療法およびストレスのセルフケアに関しての助言を行いました。
・気仙沼での日本医科大学と協力しての活動:
まず、気仙沼での医療支援拠点ミーティングに参加した折、全国からの精神科医の医療援助を受け入れ、統括している東北大学精神科の佐久間先生に増山先生が接触してくださり、児童精神科医として紹介してくださいました。
 主に全国から派遣されたDMATのチームが各地域の避難施設に拠点を作り、定点での診療活動と地域の巡回を行っているが、精神科医の常駐していないチームが多く、急な精神科ニーズに対応できていない旨をうかがいました。
 また、個々のニーズに対応して精神科医を派遣しようにも、東北大学精神科で独自に動けるだけの足(車両)が確保できていないため、結果的にはどこかのチームの診療に便乗する形をとらざるを得ないとのこと。(東北大学精神科も指揮系統が混乱しており、全国からの問い合わせに対応しきれていないようであった)
 上記を踏まえ、2日目以降は精神科医が常在していないが担当地域に2つの老健施設と、知的障害者および発達障害者の施設をかかえる日本医科大学のチームに合流し、精神科診療を担当することとしました。日本医科大学の担当区域は唐桑半島。唐桑半島は地理的条件(半島)もあり、支援の手が入りづらく、電力の復興にも時間がかかる地域です。また、被災した沿岸部とまったく無傷の山間部との落差が激しかったです。(この点は気仙沼の他の地域でも同様)
3月26日午前中には、知的障害者施設「高松園」を訪問。施設職員10名前後、入所者60名前後、避難民30人前後の施設でありました。施設職員が適切な対応を行うことで比較的状態は安定していましたが、自閉症の強い入所者で自傷や他害に至っている方が計2名あり。施設職員に負担がかかっているため疲労の色が強かったです。このため、主に施設職員との面談を行い(全部で計3時間程度)職員のストレス軽減に努めるとともに自閉症者の対応についてのアドバイスなどを行いました。
 同日午後には80人前後が避難している「中井公民館」を訪問。救命救急科の医師が内科外科の一般外来診療を行う傍らで、こころの問題についての相談を受け付けました。不眠の訴えが数名、また集団生活で他人に迷惑をかけるのではないかとの心配ごとの相談が一名ありました。
 その後、担当区域内の老健施設「つくしの里」「つくしの里 はやま館」の2か所
を訪問し、同施設の入所者および避難民の診療にあたりました。「つくしの里」ではせん妄患者が2名おられ、薬物調整を行いました。
 3月27日は前日と同じく中井公民館での診療を行い(不眠、強い悲哀反応のある方が一名おられました。)、午後からは地域の保健師から情報を得て、5件の巡回診療へ。うち2名には不眠などの主訴で処方を行い、残り3名については傾聴と精神療法のみで対応。また、「なにかあれば公民館へ」と情報提供を行いました。

3.今後について
 被害状況は現地入りしてみると予想をはるかに超えて酷かったです。
 しかしもともとの地域性もあり、隣近所をよく把握しており、孤立しづらい環境ができていること、避難施設内でも避難者同士での心理的ケアが有効に機能しており、疎外感を感じる人が少ない事は特筆すべきと感じました。ただし、現地スタッフの頑張りによって支えられている部分が大きく、むしろ今後はその点を十分にケアしていく必要があると感じました。
 被災地域での診療も比較的早期に復活しつつあり、あまり介入しすぎることも好ましくないのではないかという意見もありましたが、避難所の雰囲気が良好であるだけに、今後避難所が徐々に解散し、自宅へ戻ったり移転したりする人たちが増え始める時期には燃え尽きや寂しさ、虚無感に襲われ精神的に不調をきたす人が増加することが予想されます。

以上です。

澤谷 篤 拝
日本医科大学精神神経医学教室(4月より左記に勤務先が変わりました)
posted by 日本登山医学会ブログ at 12:08| Comment(1) | 会員情報
この記事へのコメント
Posted by 南月 at 2011年11月17日 12:00
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